現代労働組合論・賃金論、現代社会論、労働社会学、女性労働論。最近は、若者の非正規雇用、格差問題を重視。

 『POSSE』への執筆       2014.12.28更新











POSSE――非正規労働・派遣労働、若者の過酷労働などを追求  (PDF版、下線部分をクリックしてください。2014.03.22)


「リストラ・『追い出し部屋』と日本型雇用の変容」、2014年3月、『POSSE』22号、71頁~79頁

安倍「労働改革」の目的と方法、その結果 : 日本版「労働力流動化」か、労働市場政策か(特集 安倍政権はブラック企業を止められるか?)、木下 武男、Posse : 新世代のための雇用問題総合誌 20、18―31、2013―09

限定・無限定正社員問題と労働運動の課題(特集 安倍政権はブラック企業を止められるか?)――(限定正社員をどう論じるのか?) 、木下 武男、Posse : 新世代のための雇用問題総合誌 20、45―55、2013―09

日本型雇用システムの経験は、もう通用しない 若者の過酷労働と生活時間保障要求(「ブラック企業」変革論) 、木下 武男、Posse : 新世代のための雇用問題総合誌 17、142―154、2012―12

うつを生みだす人事制度(間違いだらけ?職場うつ対策の罠)――(X社の職場うつ)、木下 武男、Posse : 新世代のための雇用問題総合誌 14、79―84、2012―03


東電の暴走と企業主義的統合――労使癒着によるチェック機能の喪失(特集 〈3・11〉が揺るがした労働)、木下 武男 、Posse 11、17―27、2011―05

腐朽する日本の人事制度と周辺的正社員(特集 もう逃げだせない。ブラック企業)、木下 武男、Posse 9、92―99、2010―12

大失業時代における労働組合のヘゲモニー戦略(特集 労働組合の新時代)、木下 武男 、Posse 4、30―41、2009―07

「格差論壇」MAPとは何なのか(特集 「格差論壇」の座標軸)――(「格差論壇」MAPのゆくえ)、木下 武男、Posse 4、99―103、2009―07

派遣労働の変容と若者の過酷(特集 派遣労働問題の新段階)、木下 武男、Posse 1、23―38、2008―09

     




超就職氷河期、長時間労働、低賃金、パワハラ、生活保護バッシング……
かつてない厳しい現実のなか、ユニオン(労働組合)に加入し立ち上がった若者たち。
運動のなかで彼らはどう変わっていったか?
格差と貧困のなかで奮闘する若者の姿から新たな社会への展望が見えてくる。

    

四六判並製/200頁
定価1,365円
旬報社
発行日 2012年10月17日
ISBN 9784845112876 C0036


「はじめに」より

「今時の若い者は」という言い方は、古今東西いつの時代にもありました。それは若者の純粋さや未熟さからくる行為に、上の世代が違和感を感じてのことだと思います。しかし、現代日本社会で、同じような感情から若者をみるとするならば、それは現実を見誤ることになるでしょう。若者とその上の世代とのギャップは、意識の問題ではなく、働き生活する客観的基盤の大きな「断絶」からきているからです。
 非正規雇用の働き方で、自分の生活をなりたたせなければならない若者たち、正社員なのに過酷な労働を強いられる若者たち。二〇〇〇年代以降、この「断絶」は広がり、深まっています。
 二〇〇六年から、突如として巻きおこった若者の異議申し立ての運動は、日本の労働社会の大きな変化から生まれたのです。「反貧困」・「反格差」をもとめるこの運動は、規模や水準は違いますが、緊縮財政政策に反対するヨーロッパの運動や、「ウォール街を占拠せよ」の標語のもとで起きたアメリカの若者の運動とも共通するところがあります。
 この「新しい運動」の登場や、民主党新政権の誕生は、人びとにいくらかの希望をもたらしたように感じました。しかし、民主党政権は動揺し、自壊しつつあります。人びとは再び時代閉塞感を強めているように思われます。そして、この閉塞感を利用して、過激な新自由主義勢力が台頭しつつあります。
 ユニオン運動はこの時代の転換点にたって、いかなる構想力をもたなければならないのか。それは、若者を中心にした働く者の世界に何が起きているのか、そして「新しい運動」はどのような意味をもっているのか、これらを分析することをつうじて理解されると思います。

 この本は次のように構成されています。第1章は、一九九〇年代から二〇〇〇年代にかけて戦後日本の労働社会に生じた激変を、時代の経過にそいつつ、若者の貧困と過酷な労働に焦点をあてて分析しています。第2章は、その貧困や過酷な労働を克服するために、社会労働運動がきちんと戦略をたてる必要にいま迫られていること、それは、福祉国家とジョブ型労働市場の形成という方向にあることを示しました。第3章と第4章は、その方向に向かっていくためには、これまでの運動を根本的に改革する必要があることを検討しています。
 本書では三人の若者と四つの団体の発言を文中に入れています。どんなに貧困で過酷な労働のもとにあっても人びとは立ち上がりません。三人の若者はワーキングプアからユニオンにたどり着いた少数者です。四つの団体は、「新しい運動」の一翼を担って運動をすすめた団体のリーダーです。ここでの発言は個人的なものであり、団体を代表してのものではありません。四団体についてここで紹介しておきます。
●首都圏青年ユニオン
二〇〇〇年に、パート・アルバイトなど不安定雇用の青年たちが中心となって結成された労働組合です。文字どおり若者を対象にしたユニオンです。つねに若者の現実をリアルに捉え、とくに貧困問題と労働問題とを結合して運動を進めています。「反貧困たすけあいネットワーク」にも積極的に参加しています。
●東京東部労組
一九六八年に結成された地域合同労組です。労働相談活動では定評がある組合で、グーグルの労働相談の検索ではトップクラスにランクされています。若者を対象にした組合ではありませんが、二〇〇九年の大会で選出された委員長の菅野存さんと、書記長の須田光照さんはともに三〇歳代です。ユニオン・リーダーが若者ということです。
●NPO法人「POSSE」
二〇〇六年につくられた若者を対象にする労働NPOです。労働相談活動を軸に労働法を社会に普及させる取り組みや、東日本大震災の復興のためのボランティア活動、年四回発行の雑誌『POSSE』の刊行などの活動をおこなっています。代表は二九歳、編集長も二九歳、事務局長は二五歳という、若者による若者のための労働NPOです。
●NPO法人ガテン系連帯
二〇〇六年に結成されました。私が共同代表をつとめていますので若者の団体とはいえません。しかし、参加している人の多くは若者です。派遣労働者がすぐに労働組合に入れなくても、それを支援していく揺籃のようなものをめざし、また、派遣労働の実態を社会的に訴えるためにつくられました。派遣切りにあって多くの会員が派遣の現場から追われました。


『若者の逆襲』を書いて

  『労働情報』《時評自評》:852号(2012/12/1)
 
木下武男(昭和女子大学)

 『若者の逆襲』は「ガテン系連帯」の共同代表を私がつとめたその運動体験と、研究者としての分析という二つの視角にもとづいています。
 『若者の逆襲』は、今の時代における三つの危機と、その危機を克服できていない隘路を感じながら書きました。

 第一は、日本の労働運動が危機的な状況にあることです。
 全労連、全労協という全国組織の組合員が2000年以降、急速に減少しだしています。さらに団塊世代の活動家の定年退職は運動に打撃を与えています。この危機的状況を打開するには、労働運動の世代交代をはかる以外にはありません。しかし、ここにネックがあります。

 それは、日本社会に大きな世代間の「断絶」が存在していることに労働運動は十分に気づいていないことです。
 『若者の逆襲』では若者のおかれている過酷な現実の分析とともに、自己責任論によるだけでなく、無力感、諦念感におちいっている若者の精神状況、さらにはそれをふまえた運動の作り直しについても検討しました。

 第二は、2000年後半から、貧困と過酷労働はすさまじい勢いで若者にのしかかってきていることです。
 「家族は今やぜいたく品」という言葉があるように若者は家族形成不能な生活水準に落とし込まれています。
 また、「正社員になりたい者はどこにもいる」という労働市場圧力に若者はさらされています。これは、規制なき労働市場が2000年代以降、急速に広がったからです。
 しかし、ここにネックがあります。それは日本の労働組合は、流動的な労働市場を規制する経験をほとんどもっていないということです。
 『若者の逆襲』では労働相談活動や労働者の組織化を紹介しつつ、今後の方向性について論じました。

 第三は、いっそう過激な新自由主義勢力が台頭しつつあることです。
 橋下・石原・安倍という個々の人物の極右的な政治方向もさることながら、労働組合としては彼らがなぜ日本の民衆の支持を得ているのか、そのことの深刻さを直視すべきだと思います。
 貧困・格差・雇用不安の時代のなかで打開の方向が民衆に理解されず、しかも状況はどんどん悪くなる、なにも変わらない。
 この時代閉塞感こそが彼らにとって絶好のチャンスなのです。
 この新自由主義勢力と対抗する上でもネックがあります。
 それは、彼らの台頭の基盤でもある貧困・格差・雇用不安の現実にたいして社会労働運動がまだ目にみえる有効な運動を展開できていないということ、それと、日本を変える長期的な方向性と戦略を提示できていないことです。

 『若者の逆襲』では、抽象的な理論分析ではなく、聞き取りによる実例をまじえています。
 人びとは貧困で過酷な労働のもとにおかれ、どんなに理不尽な仕打ちをされても立ち上がりません
 ワーキングプアの3名の聞き取りから、ユニオンにたどり着くルートを探りました。
 また、本書では4つの団体の先進的な経験を紹介しています。
 『若者の逆襲』が、戦後労働運動のなかで一筋の光を放った2006年からの新しい運動にとって、再び陣容を整え、歩を進めるための議論の一助になれば幸いです。

土佐のまつりごと
新たな福祉国家とジョブ型労働市場の提起(メモ)

http://wajin.air-nifty.com/jcp/2013/01/post-0190.html

労働、社会保障政策の転換を
―― 反貧困への提言 ――
岩波書店、2009年1月9日

https://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/7/0094460.html

遠藤 公嗣、河添 誠、木下 武男、
後藤 道夫、小谷野 毅、今野 晴貴、
田端 博邦、布川 日佐史、本田 由紀
■体裁=A5判・並製・62頁
■定価(本体 500円 + 税)
■2009年1月9日
■ISBN978-4-00-009446-7 C0336

不安定な非正規労働者、社会保険の適用もない低処遇の「正社員」、ワーキングプア、生活保護を受けられず住む家にも困る者、違法な労働環境に苦しむ者……進む労働破壊と貧困化.この現実を、若者がどのように受け止めているのか分析し、どのように変えていくべきなのか、どうやって変えていくのかを、具体的に提言する.
目次
働く若者たちの現実
――違法状態への諦念、使い捨てからの偽りの出口、実質なきやりがい
  今野晴貴、本田由紀
共同提言 若者が生きられる社会のために
 遠藤公嗣、河添誠、木下武男、後藤道夫、小谷野毅、田端博邦、布川日佐史、本田由紀

主なBOOK新着情報

  若者の逆襲 ワーキングプアからユニオンへ
 
木下武男 著
旬報社
2012年10月17日
1365円
   POSSE vol.20: 安倍政権はブラック企業を止められるか?

NPO法人POSSE
今野晴貴、木下武男、 熊沢誠
2013年9月25日
 
格差社会にいどむユニオン―21世紀労働運動原論

木下武男 著
花伝社
2007年09月
   なぜ富と貧困は広がるのか―格差社会を変えるチカラをつけよう

後藤道夫・木下武男 著
旬報社
2009年6月18日(改訂版)

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〒180-0004
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メール:kinoshitatakeoアットnifty.com(アットを@に)

 労働社会学者(元昭和女子大教授)。
 1944年福岡県生まれ。10歳の時に東京に移り住む。1964年に東京理科大学工学部に入学、さらに法政大学社会学部を卒業し、75年法政大学大学院社会学専攻修士課程修了。その後、労働科学研究所嘱託研究員や法政大学などの大学非常勤講師をつとめる。
 1999年に、鹿児島国際大学福祉社会学部教授、2003年に昭和女子大学人間社会学部教授に。大学の担当科目は労働社会学、現代社会論などを歴任、専門は日本型雇用や若者の貧困と過酷労働の分析、女性労働論、労働組合論など。
 著書は『日本人の賃金』(平凡社新書、1999年)、『格差社会にいどむユニオン―21世紀労働運動原論』(花伝社、2007年)、『若者の逆襲』(旬報社、2012年)、共著は『なぜ富と貧困は広がるのか―格差社会を変えるチカラをつけよう』(旬報社、2008年)など多数。

























編集人:飯島信吾
ブログ:ある編集者のブログ
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UP 2014年02月15日
更新 2014年02月20日
更新 2014年04月05日
更新 2014年12月28日
更新 2015年09月20日