4 日本側研究者グループの主たる研究蓄積と成果等
日本側研究者グループの主たる研究蓄積と成果等
明治大学の中川雄一郎・柳沢敏勝等を中心とした研究グループは、英国の協同組合思想、労働者協同組合(コミュニティ・コープやケア・コープを含む)について長年の研究実績を有し、英国における労働者協同組合運動の流れが、ブレア政権以降、社会的企業という政策上の概念として再編成(
reframing)されつつ、地域再生や社会的排除問題の解決主体として活動してきた実態を、サンダーランドやアカウント
3を中心に実証研究を積み重ねてきた。
一方、原田晃樹・藤井敦史・大高研道等を中心とした研究グループでは、
2003年以降、イタリアの社会的協同組合、英国ロンドンの主要な社会的企業(ブロムリー・バイ・ボー・センター、カレイド・スコープ、タワー・ハムレット
CDA、
CAN、
SEL)等のヒアリング調査を蓄積させており、欧州の社会的企業が、雇用政策や地域再生政策を基盤とした一定の公的資金(補助金や事業委託)の投入を条件として発展してきていること、とりわけ政府から社会的企業への委託事業のあり方が重要であることを明らかにしてきた。また、社会的企業の基盤には、イタリアの社会的協同組合にみられるコンソーシアム等、豊富な中間支援組織が存在し、ローカル・ガバナンスにおいて一定の影響力を発揮する上でも、大切な役割を果たしていることということも重要な知見だった。
また、このグループでは、日本国内の労働統合型社会的企業についても、協同組合の系譜に位置するワーカーズ・コレクティブや労働者協同組合を中心に既に調査研究を進めており、就労困難者の受け入れ実績のある団体のヒアリング調査に加えて、包括的なアンケート調査も実施し、これらの社会的企業における社会的包摂の実態とその条件について検討してきた。
加えて、こうした調査の過程では、ワーカーズ・コレクティブの連合組織の代表者達と共に
JWISE研究会を組織し、実践家との密接な関係を構築しながら調査研究を遂行してきており、日本の労働統合型社会的企業や協同組合によるネットワーク組織である社会的企業研究会や共生型経済推進フォーラムとも密接な関係を構築している。したがって、本調査研究においても、労働者協同組合、ワーカーズ・コレクティブ、共同連その他の団体の協力を得ることが可能な状況にある。
これらの研究は、主として、以下の科研費による調査研究を基盤としている。
@研究課題名:「コミュニティ・ビジネスのコラボレーション構築過程に関する国際比較研究」、基盤研究
C、平成
15−
17(
2003−
2005))年度、研究代表者:中村陽一(研究分担者:藤井)
A研究課題名:「社会的企業におけるイノベーションとその基盤条件に関する国際比較研究」、基盤研究
B、平成
18−
20(
2006−
2008)年度、研究代表者:藤井敦史、研究分担者:原田・大高)
B研究課題名:「社会的包摂の担い手としての社会的企業の制度的・社会的基盤に関する日韓比較研究」、基盤研究
C、平成
2009−
2011年度、研究代表者:藤井敦史、研究分担者:原田・大高)
C研究課題名:「福祉社会における非営利中間組織の役割に関する理論的実証的研究」、基盤研究
C、
1998−
2000年度、研究代表者:中川雄一郎(研究分担者:柳沢)
D研究課題名:「ポスト福祉社会における非営利・協同セクターの役割に関する日米欧比較研究」、基盤研究A、
2002−
2005年度、研究代表者:中川雄一郎(研究分担者:柳沢)
E研究課題名:「市民連帯型福祉国家形成に関する調査研究」、基盤研究
C、
2009−
2011年度、
研究代表者:柳沢敏勝
F研究課題名:「市民連帯型福祉社会の構築に関わる調査研究」、基盤研究
C、
2012−
2014年度、研究代表者:柳沢敏勝
これらの研究の成果は、原田晃樹・藤井敦史・松井真理子
(2010)『
NPO再構築への道』勁草書房や中川雄一郎・内山哲朗・柳沢 敏勝
(2008) 『非営利・協同システムの展開』日本経済評論社を中心に公表されており、その一覧は後述の研究業績に記してある。
◇2010年から2012年 研究業績一覧
◇2007年から2009年 研究業績一覧