明治大学特定課題研究ユニット
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本研究は、以上のような三つの目的を主要な目的としているが、これらの目的を達成するために、以下のような具体的な調査研究対象を設定している。
(1)英国の社会的排除問題に取り組む社会的企業の実態調査
本調査研究は、英国のイースト・ロンドンに位置するイースト・ロンドン大学の研究者やアカウント3等の著名な社会的企業の実践家との共同調査研究となる。それゆえ、多くの移民が住み、貧困者も多く、荒廃地域であるイースト・ロンドンにおいて活躍している数多くの社会的企業のヒアリング調査を行い、具体的に、社会的企業がどのようなプロセスで社会的包摂の実践を行っているのかを明らかにする。
また、地方の産業衰退地域であるサンダーランドにおいても、研究代表者である中川等の長年の社会的企業の実態調査を基盤に、SES等を中心として、分厚い協同組合のネットワークを基礎とした社会的包摂のあり方について詳細なヒアリング調査を行う。
加えて、以上のような現場の社会的企業と同時に、社会的企業の重要な中間支援組織(インフラストラクチャー組織)として活動している組織等を訪問し、社会的企業支援の方法、キャメロン政権以降の社会的企業政策の影響等についてヒアリング調査を行う。また、同時に社会的企業における社会的価値を測定するための方法についても調査し、今日、日本でも紹介されつつあるSROI(Social Return On Investment)や社会監査について批判的に検討し、社会的企業にふさわしいアカウンタビリティのあり方を検討する。
(2)日本の社会的排除問題に取り組む社会的企業の実態調査
日本の典型的な社会的排除に取り組み、地域社会に密着しながら、一定の仕事を生み出している労働統合型の社会的企業(WISE)として、本調査研究では、@貧困者(ホームレスを含む)、A若者(ひきこもり・ニート等)、B障害者、C高齢者等による仕事起こし、D過疎の中山間地域における仕事起こし、E被災者による仕事起こしに携わっている社会的企業を取り上げ、実践家とも協力しながら詳細なケース・スタディを行う。具体的には、地域社会と密接な繋がりを持った、当事者を軸とした協同的な実践であること(狭義の労働者協同組合以外のNPO等を含む)という視点から包括的に事例を選び、調査を行う予定である。
(3)被災地において社会的包摂の担い手となっている社会的企業に対する参与観察
阪神淡路大震災の際には、仮設住宅での孤独死等、社会的孤立の問題がクローズアップされ、そうした中で生きがいや社会的承認を被災者が実感するための「生きがい仕事」づくりとして、コミュニティ・ビジネスが重要な役割を果たした。本研究では、神戸のコミュニティ・ビジネスの事例に学びつつ、東日本大震災における被災地での同様の仕事起こしの可能性を検討する。
具体的には、既に、研究分担者である原田晃樹・久保善慎が被災地に入り、自治体調査やボランティア活動の拠点作りなどを行ってきた。各被災地においては、被災前の状態への復旧は行われているが、次の重要なステップとなる復興の検討段階には至っていないことが明らかになってきた。
また、社会変革手法として被災者自らの力による内発的な復旧・復興にむけた、共同出資によって新規創業をし雇用を生み出す組織など、被災地に広がる同様の事例を発掘し、継続的な調査が可能な事例を選択して、継続的に被災者の社会的包摂の実践を記録していく。と同時に、上記(1)と(2)の研究から浮かび上がってきた社会的包摂に関するエンパワーメントの手法や基盤となる制度のあり方について、現地の社会的企業の実践家と共に、被災地への適用可能な実践的な処方箋を考察し、自治体の政策担当者や一般市民等に政策提言を行う。
(1)日本国内では、1月から月に1回のペースで研究会を開催し、前半は、社会的企業による社会的包摂をめぐる理論研究と、日本での実証研究に向けた具体的な調査計画に向けた基礎資料の収集・分析を行う。また、東日本大震災の被災地における社会的企業の事例に関して、UELのクロサンガン氏等と共にヒアリング調査を実施する。さらに、日本の社会的企業の事例(貧困、障害者、高齢者、若者等)を分担しながらケース・スタディを実施する。
(2)英国においては、イースト・ロンドンの社会的企業(アカウント3)、サンダーランドのSES、Co-operatives UKやSEC、SEL等のインフラストラクチャー組織のヒアリング調査を実施する。2012年度は、研究分担者の藤井が渡英し、UELに籍を置く。イースト・ロンドンを中心とした社会的企業や関係機関について調査を行う際のコーディネーションを依頼する。
2−2−2 2013年度(2年目)
(1)国内における社会的企業調査を活発に展開するとともに、継続的に研究会を開催する。
(2)日本の社会的企業の事例(貧困、障害者、高齢者、若者等)を分担しながらケース・スタディを精力的に展開し、成果は協同組合学会・福祉社会学会その他で報告を行う。
(3)継続的に、被災地でもケース・スタディを深める。
(4)英国調査は、社会的企業と自治体の委託制度、社会的企業の社会的評価の仕組みに関して重点的に検討する。
2−2−3 2014年度(3年目)
(1)継続的に研究会を開催し、調査研究の結果に関する討議を深める。
(2)前年度までの研究をもとに、研究成果を内外に発信することを目的として、明治大学において国際シンポジウムを開催する。
2−2−4 2015年度(4年目)
(1)研究成果等をもとに、日本語による本を出版する。また、継続して研究会を開催する。
(2)EMES大会に参加し、研究成果について報告し、国内の実態について世界に発信する。
2−2−5 2016年度(5年目)
(1)英文で本を出版し、研究成果について世界に発信する。
(2)研究成果の意義について検討するため、明治大学において国際シンポジウムを開催する。