草加市に住む視覚障害者の宮田新一さん(65)。視力は0・02で、生活に白杖は欠かせない。宮田さんの目から見た風景はぼんやりとしたもので、電車の乗車は音で判断することが多いという。宮田さんは「別のホームに到着した電車の音を聞いて自分が乗る電車が来たと勘違いし、線路に落ちそうになったことがある」と振り返る。
今年1月にはJR山手線目白駅で、ブラインドテニスの考案者で全盲の武井視良(みよし)さん=当時(42)=がホームから転落し、電車にはねられ死亡する事故が起きた。視覚障害者がホームから転落する事故が相次いでいることから、国交省は今月、1日の乗降客数が10万人以上の駅にホームドアの設置を求めるなどの設置基準を定め、鉄道会社に転落事故防止を呼びかけている。
県交通政策課によると、県内でホームドアが設置されているのは埼玉高速鉄道とつくばエクスプレスの各駅のみ。県内には乗降客数10万人以上の駅は大宮や川越など15駅あるが、いずれもホームドアは設置されていない。その背景には、車両によってドア数が異なる▽数億円以上の費用がかかる-などの理由があるという。同課は「県で補助を出すにしても、設置費用が多大で、予算の確保が難しい」としている。
川越や和光市など乗降客数10万人以上の駅を抱える東武鉄道は「整備の進め方などの検討が開始されたばかりで、具体案は決まっていない」としている。また、大宮や川口駅などがあるJR東日本大宮支社は「山手線の整備を進めている。埼玉ではまだめどが立っていない」とし、県内の設置にはまだ数年以上かかりそうだ。
しかし、ホームドアの有無は視覚障害者にとって命にかかわる問題だ。宮田さんはホームドアがある駅について「本当に安心できる」と力強くうなずき、「多くの駅に早く設置されてほしい」と訴えた。
社団法人県視力障害者福祉協会によると、視覚障害者を対象にアンケートを行うと、「駅のホームから転落したり、転落しそうになった」「ホームドアの設置されている駅は1人でも安心」などの回答が多く寄せられるという。このため、同協会では数年前から、設置の要望書を県や鉄道各社に提出しているという。同協会は「難しいのは分かっているが、要望を続けてホームドア設置を実現したい」としている。
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△混雑する通勤ラッシュ時の駅ホーム。乗降客数10万人以上の駅は混み合う時間も長く、視覚障害者がホームから転落する危険性も高い=24日午前7時半、JR浦和駅
MSN産経ニュース
▽2022.01.11
◇[リンク先]越谷エリアの「視覚障がい者のサークル」と施設。各地の施策と施設から学びたい。
▽2022.01.18(追加しました)
◇[これまでのポスター群]
▽2022.01.17
◇[噂のアリス飲んべー会]